AIでもホームページを作れる時代に、人が担う仕事とは【株式会社クライプキン 松山さんインタビュー】

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2026.07.20

Webマーケティングの支援を一人で手がける、株式会社クライプキンの松山さんに、お話を伺いました。

AIで様々なデジタルの制作が可能になり、検索エンジンを介さずにAIへ直接答えを聞く人が増えています。

そうした今の風潮を、18年以上Webマーケティングと制作の現場に立つプロフェッショナルはどう見ているのでしょうか。業界のいまとこれからについて、率直にお話しいただきました。

株式会社クライプキン_会社概要

株式会社クライプキン
目次

「自分でやってみてもいいと思うんです」。AIで作れる時代に、プロへ依頼する意味

ーーー AIでホームページを作る会社が増えていることについて、どう思われますか

正直に言うと、自作でやってみてもいいんじゃないかな、と思っています。ただ、AIに任せた方が良い範囲と、人が関わった方がいい範囲は、やっぱり違うんですよね。

「ホームページを作って」とAIに言えば、たしかに作ってはくれます。でも、それが正解とは限らない。本来は、ターゲットはこうで、自社の状況はこうで、商品はこうで、ホームページの目的はこれで、だからそれに見合ったものを作ってほしい、というところまで伝えないといけないはずなんです。

その手前にあるレイヤーやフィルターを、どれだけ細かく切り分けて、緻密に設計しながら目標に向かっていくか。そこが肝なのに、その工程を飛ばして「作って」「ここを直して」の一言二言で済んでしまう。便利ではあるのですが、それで本当にいいのかな、形だけのハリボテになっていないかな、という思いはあります。

ーーー それでも「まずは自分でやってみては」とおっしゃるんですね。

目の前にいる友人がやっているなら、「それ、大丈夫?」くらいの声かけはします。でも、そうでない相手にまで無理に踏み込むことはできませんから。やりたいのであれば、やってみたらいいと思うんです。

そのうえで「作ってはみたけれど、なんだか違うな」「やっぱりプロに任せた方がよかったな」と思われたときに、初めて相談に来ていただく。自分で出来ると思っている企業さんには、その方が、お互いにとっていい方向に向かうことが多いと感じています。そうでないと、「AIなら3日でできるのに、どうして100万も200万もかかるんですか」という話になってしまいますよね。

一度ご自身でやってみて、その苦労やうまくいかない理由をわかったうえで相談してくださる方とは、やはり話が噛み合います。仕事は困っている方を助けるためのもので、お金儲けはその先にあるものだと思っていますので。

ーーー AIで作れてしまうからこそ焦って、営業で無理に案件を取りにいく事業者も少なくありません。松山さんのスタンスは珍しいのではないでしょうか。

そうでしょうか。ただ、昔からこのスタンスは変わっていないですね。「予算がないので自社で作ることになりました」と言われたら、「わかりました」と引きます。それで一年後に相談してくださることもあります。

いわゆる営業はしないと決めているということもありますが、ウチがやりたいことの第一は、案件をとりに行くことでも、制作物を仕上げることでもなく、クライアントのマーケティング支援です。それは信頼関係の中でやっていくことなので、それが構築できないうちに、無理な提案をすることはないですね。

無理に営業をかけて案件を取りにいったことは、たぶん一度もないと思います。

「部屋に入った瞬間から始まっている」。制作の成否を決めるヒアリングのこだわり

ーーー 実際にホームページを制作されるとき、松山さんはどのような流れで進めているのでしょうか。

まずは徹底的にヒアリングです。これが一番大切で、とにかく話を聞くことに徹しています。

最初は「そもそも御社は何をされている会社なのかをもう一度教えていただけますか」というところから始めます。サイトやカタログを読んで勉強はしていくのですが、書かれていることと、実際に話していただくことのあいだには温度差があるんですよね。

担当の方によっても違いますし、開発部門の方と売っている方とでは、「この商品の特徴は何か」の答えが変わってきたりもします。その差を、できるだけ広く集めたいと思っています。

ーーー 差、というのは具体的にどのようなものでしょうか。

たとえばスマートフォンひとつ説明するにしても、「インターネットにつながる電話です」と言う方もいれば、「世界とつながる機械です」と表現される方もいますし、「不便を便利にする機械です」とおっしゃる方もいます。その言葉のチョイスに、商品や会社の特徴が表れていると思うんです。だから、言葉のニュアンスを拾うことが多いですね。

出てくるキーワードの偏りを見ていると、「うちは営業の会社です」とご本人たちは言っていても、実はクライアントのお世話に近いんだな、と気づくこともあります。そう感じたら、キャッチコピーの付け方もそちらに寄せていきます。

ーーー 自然な言葉を引き出すために、意識されていることはありますか。

かしこまって「これからお話を聞かせてください」と切り出すよりも、「それは大変ですよね」「難しいですよね」と共感や感嘆をお伝えした方が、「そうなんですよ、この前もこんなことがあって」と出てくるんです。その何気ない一言のなかに、本音が隠れていたりします。

これは、部屋に入った瞬間から始まっていると思っています。この人にはどこまで胸を開いて話していいのか、相手も測っていらっしゃいますから。だからこちらからも、多少は開いて話す必要がある。とはいえ、開きすぎたら失礼なやつだと思われてしまいますし。威厳を保ちつつ、敬意も払いつつ、それでいてカジュアルに。そのバランスは、けっこう気にしていますね。一度で足りなければ、「今日は全体の雰囲気を伺わせてください」「次回は商品について詳しく」と、回数を分けてヒアリングを重ねることもあります。

外部ディレクターとして入った案件で、ヒアリングの仕方を褒めていただいたこともありますし、友達の隣で仕事依頼の電話を受けた時も、褒められました。自分では気を遣っているだけのつもりなのですが、そのあたりは他の人より特長があると思ってます。

ーーー なるほど。ヒアリングのあとは、どう進むのでしょうか。

最初の方向性がずれてしまうと、進めば進むほど戻る距離が長くなってしまいます。だからこそ、出発点の方向性は本当に大事にしています。そのうえで企画・サイトの方向性・ターゲットの選定・構成・メインで使うシステムやデバイスを固め、デザインに落とし込み、すり合わせをして、実装して、テスト環境で確認をいただいて公開、という流れです。

以前は細かいワイヤーフレームをお出しして確認をいただいていましたが、今は工数の面から省略して、叩き台のデザインからお話しすることも多くなりました。デザインを具体化させた方が、必要な素材も直すところも見えてきて、話が進めやすくなりますので。

目的から逆算する。AI時代に成果を出し続けられる「良いホームページ」とは

ーーー 松山さんが考える「良いホームページ」とは、どのようなものでしょうか。

解決したい問題の答えが載っていること。そして、成果を出し続けられることだと思っています。あとは目的とターゲットがはっきりしていて、改善を続けられる、育てやすいサイトですね。結果として、費用対効果も高くなります。

なので、「なぜ今ホームページを作るのか」は必ずお聞きします。社長が代わった、デザインが古くなってきた、認知を広げたい、売上を上げたい。目的によって答えは変わってきますから。ホームページというソリューションにこだわる必要もないので、SNSの方が合っていると思えば、そちらをご提案することもあります。

ーーー 作って終わり、ではないということですね。

アクセスは広告で取るのでSEOは不要です、という判断もあります。そういう前提を確かめたうえで、大きな改修をしなくても4〜5年は持つように、拡張性を見込んで設計するようにしています。

答えを探す検索から、答えそのものを求めるAIへ

ーーー 検索をせずにAIに聞く方が増えていることについては、どう思われますか。

これまでは、答えを出すための情報を集めるために検索していました。それが、答えそのものを求めるようになってきているように感じます。

自分で選んだり、決断したりする負担は減りますよね。ただ、それは自分で思考しなくなるということでもあります。そうなったときに、ハルシネーション(AIの誤り)に気づけるかどうかがネックになるんじゃないかな、と。

問いを立てる力は、これまで以上に求められるようになると思いますし、その問いを適切に立てられる人が賢くAIと付き合えるんじゃないかなとも思います。

5年後、10年後。ホームページは「情報を溜めておくストレージ」になる

ーーー 5年後、10年後のWebサイトは、AIによってどう変わっていると思われますか。

正直、わからないと言えばわからないですね。ただ、今の形はしていないだろうな、とは思っています。

デバイスが発達して、メガネや時計からインターネットに触れる機会が増えていけば、AIがそれぞれのデバイスに合わせて出力するようになります。そうなると、HTMLやCSSで「形」を作ることの意味が変わってくる。主体になるのは、情報の入ったデータ構造の方だと思います。

ーーー ホームページそのものは、どうなるのでしょうか。

ホームページへのアクセス自体は減っていく気がしています。音声で吐き出せばOK、AIが必要な情報を一枚にまとめて出力する、といったことも起こりうるのかなと。そうなると、ホームページは自社の情報を溜めておくストレージ、一次情報の発信源としての役割が強くなって、コンバージョンの受け皿があるだけ、という形に近づいていくのかもしれません。

ーーー デザインの仕事は減っていくのでしょうか。

可読性のためのデザインは、おそらく消滅すると思います。ただ、装飾的なデザインは残るんじゃないかなと。イメージやストーリーを伝えるためのデザインですね。ハイブランドなどは、まさにそうだと思います。

それが全部なくなって情報だけになってしまったら、寂しい世の中だなと思うんですよ。ベースはテキストデータでありつつ、情緒に訴えるものは人間の活動には必要そうだなと。デザインの意味合いが変わる、ということだと思っています。

均一化するアウトプットのなかで、「人の手」が価値になる

ーーー Web業界は今後、どうなっていくとお考えですか。

制作に関しては、みんなAIに頼っていくことになると思います。そうするとアウトプットは均一化・平均化していって、テンプレートで作ったようなサイトが増えていく。

そうなったときに、人間の手で作られたものに価値が出てくる可能性はあると思っています。鯖江のメガネのように、「この人に作ってもらった」ということ自体が価値になる、というような。工業製品に対する職人の仕事、みたいな位置づけですね。

ーーー そのなかで生き残るのは、どういう人でしょうか。

形を作る力よりも、企画設計や編集力、ターゲットの選定、プランニング、ディレクション。そういう力を持っている会社が残っていくと思います。

さっき言った、「問いを適切に立てられる」ってやつですね。

なので、私自身がやることは大きくは変わらないのかなと。ただ、これまで専門性が高くてできなかったことができるようになるので、制作の幅は広がります。そこには挑戦していきたいですね。

ーーー AIによって、専門性の薄い方が専門家として参入してくることも増えそうです。

どの分野でも増えるでしょうね。それはもう、依頼される側が見抜く選球眼を持つしかないのかなと思っています。

服でも、ファストファッションからハイブランドまでグラデーションがあって、それぞれに特徴が違うってことを知っているはずなのに、ことデジタル・webやシステムってなるとわからなくなる。

今ですら、その費用やサービス、会社によって内容が違うのに、それを知らずに安さだけで選んでしまう。

価格だけではなく、自分に合った制作者を探して欲しいですね。

組織を大きくすることは目的ではない。一人法人という選択

ーーー ずっと一人で法人を運営されています。その理由をお聞かせください。

昔は大きな会社にしたいと思っていました。ただ、会社を広げようとした矢先にコロナ禍があって、その後にAIが来て、方向性が変わりました。コスト面でも自由度の面でも、結果として今のスタイルに落ち着いています。

この業界、流行り廃りが本当に早いんですよ。昔はフレームでページを組むのが主流で、次にテーブルレイアウトが流行って、その後に今のコーディングに近いものが出てきた。組織が大きくなるほど、その速さに合わせるのは大変になりますよね。

ーーー 人を雇わずに、案件はどのように進めているのでしょうか。

案件ごとに、その案件に合ったチームを組みます。その方がいろいろな方の意見が聞けますし、自分自身の刺激にもなりますので。社員として迎え入れ、一緒にやっていきたいと思うこともありますが、「この人はいいな」と思う方は既に稼いでいらっしゃるので、それなりに費用がかかります。

組織を大きくするのは手段であって、目的ではないと思っています。人を雇えば、食べさせるだけでなく、成長のために部下を付ける、といったことも必要になってきます。そうすると、自分の苦手なことをやらないといけなくなる。それよりは、得意なことを伸ばした方がいいのかなと考えています。

センセーショナルな語りへの違和感。等身大の方が、信用が長続きするワケ

ーーー 話題は変わりますが、Web業界ではSNSで炎上を起こして話題を作り、集客するようなやり方も目立ちます。それについてはどう思いますか。

ああいうやり方は、正直あまり好きではないですね。切り抜き動画が回ってくるたびに「興味がない」と設定しているのですが、それでも流れてきます。世の中の人々はあれを面白いものとして見ているし、やっている側も何かしら利益があるから続けているんだろうな、とは思います。

お金を払う方がいるのも事実ですから、風潮のひとつとして受け入れなければならない部分もあるのでしょうね。それでも、少し苦しいなと感じてしまいます。センセーショナルに語っているけれど、中身がついてきていない。自分はそういうやり方はしたくないなと思っています。

名刺交換のときに「今の世界はこうなっているから、もっと良くしたいんです」と大きな話をされて、では実際に何をされているんですか、とお聞きすると、よくわからない、具体性がない。そういう方も、たまにいらっしゃいます。自分を大きく見せようとすることに対して、どうしても不信感を持ってしまうんですよね。

ーーー マイナスのギャップ、ということでしょうか。

そうですね。等身大の自分を受け入れていただいた方が、結果的に長続きします。マイナスのギャップが大きいほど、信頼関係は築きにくくなりますから。「私は嘘をつきません、真面目にやっています」と言いながら嘘をついている会社も、たぶんいっぱいあると思うんです。

「売上がいくらだ」「これだけ稼いでいる」と言われても、数字は見せ方でどうにでもなりますよね。売上100億でも、利益は100万かもしれない。それよりも「うちの商品はこれだけの人を救っています」と言われたら、納得できます。

生の声の口コミがちゃんと集まっていて、商品名も聞いたことがある。「あ、それ友達も使っています」と言われる。そちらの方が、絶対に価値があると思うんです。1通でも感謝の手紙を貰ったことがあるとか、何を成したかで語られるべきなんじゃないかな。

ーーー 実体があるかどうか、ということですね

そうですね。

先日、あるコンサルタントの方が「マーケティングは商品がなくてもできる。商品は後からでいい」とおっしゃっていました。そういう考え方もあるのかもしれませんが、作ることもマーケティングもディレクションもやっている身からすると、クリエイターに対して少し失礼だなと感じてしまいました。

ものがあって、それがちゃんと誰かの役に立って、だからこそ世に広める必要があるよね、という順番でマーケティングがあるべきだと思うんです。そこを飛ばして「何でも売れますよ」となってしまうのは、やっぱり空虚だなと。

約束と実際が違う、ということ。信頼は一度で崩れてしまう

ーーー 事前にお伺いした話の中に、平気で嘘をつく仕事人がいる、という話がありましたが、こちらはどういったお話しでしょうか。

本気で取り組んだうえでミスがあり「申し訳ありませんでした」と言うことと、最初から目先の売上のために話を盛って勘違いさせることは、まったく違うと思っています。

クリエイターの方に仕事をお願いして、「そろそろ納期の半分ですが、進捗はいかがですか」とお聞きしたら、「すみません、進んでいません」と。「リソースはあるとおっしゃっていましたよね」と確認すると、実際にはなかった。それは、約束と違うということですよね。それでいて、お金はしっかり取られます。

一度そうなると、あのとき語っていた仕事への熱意も、会社について話していたことも、全部嘘だったのかな、と思ってしまいます。信用がなくなってしまう。納期がありましたので最低限のところで受け取って、お支払いするものはお支払いしましたが、もう二度とお願いすることはないですね。

ーーー それは、自分も見られているということでもありますね。

そうなんです。自分が外部の方をそういう目で見ているということは、クライアントも自分をそういう目で見ていらっしゃるということですから。だから、齟齬が生まれそうなら事前にお伝えしておく、調整しておく。それは必要だなと思っています。

新規の仕事を必死に追い続けている会社は、どこかに理由があるんじゃないかとも感じています。紹介やリピートが生まれていない、ということですので。

一人社長をやっていると、不満や叱責を受けることがほとんどないんです。だから尚更に自戒をしておかないといけないですね。

レコメンドが狭めた世界。だから、意識して本屋に行く

ーーー 変化が続くWebという場そのものについて、思うところはありますか。

昔のYouTubeには、「なんでこんな動画がおすすめに出てくるんだろう」というような驚きがありました。覚えているのが、おじいさんがハンドクリームの缶を薬剤で磨き上げて、ツルツルにする動画です。検索したこともないのに出てきて、最初は「なんだこの動画は」と思いました。

ただ、クリックしてみたらめちゃくちゃ面白くて、最後まで見てしまいました。

そのバグというか、歪さが面白かったんですよね。でも今は、それがなくなってしまいました。

ーーー レコメンドの精度が上がりすぎた、ということでしょうか。

そうですね。私たちはGoogleに情報を手渡しすぎているんだと思います。丸裸にされて、プロファイリングされて、レッテルを貼られて、出てきたものをずっと摘まんでいる。栄養が偏っている感覚がありますね。

政治にしても、右の考えを持つ方が右の意見ばかり聞いているより、たまには左の意見も聞いた方がいいと思うんです。黒が好きな方も、白が好きだという方の言い分を聞いてみる。そこで「そういう視点があったのか」とハッとすることがありますから。自分が好きではないものでも、一定数の方が良いと言っているなら、その意見を聞くことで自分の許容範囲が広がる。大げさに言えば、それが器の大きさになっていくんじゃないかなと。そこを除けていくのは、もったいないと思うんです。自分の成長を妨げているんじゃないかなと。

ーーー だからこそ、意識的にアナログな方法を取り入れていると。

本屋には定期的に行きます。ショッピングモールに行ったときも本屋さんに寄って、今はどんな本が流行っているのかを見ますね。アナログな探し方をすると、こういうジャンルがあるのか、こういうものが今は読まれているのか、と新しい知見が広がりますので。

本当は、会社に10人100人といれば、趣味嗜好の違う方がいて「それ何ですか」という会話が自然に生まれるんでしょうけど。私は普段一人でやっているので、そういう機会が少ない。だから人より意識して取り入れないといけないな、と思いながら過ごしています。

自分が価値を出せる、得意なことだけを続けてきた

ーーー もう8年も会社を経営されています。ご自身では、器用な方だと思われますか。

独立してから、そうかもしれないなと思うようになりました。会社勤めのときは与えられた役割のなかにいたので、気づかなかったんだと思います。

もともと、自分は普通の人間だと思っていたんですよ。成績も真ん中くらいでしたし、運動神経が良かったわけでもない。小中学校のヒエラルキーって、勉強か運動じゃないですか。そのどちらもなかったので。

でも大人になるにつれて、自分を贔屓してくださる方、信頼してくださる方が少しずつ増えていきました。アルバイトでも「3人でやるところを2人でやってほしい」と任されたりして。そういう経験を重ねるうちに、もしかしたら多少はできるのかもしれないな、と思うようになりました。一人で会社をやっていると、経理も折衝も制作も全部自分でやることになります。そのうえでお客様に喜んでいただけるというのは、実はけっこうすごいことなんじゃないかな、と。

人が無理だという課題を回避したり、AIが出した答えとは違う方法で乗り越えたりすることもあるので、それなりに柔軟な思考ではあるんだと思います。技術に加えて、人として重宝していただけているのなら、器用ということなのかもしれませんね。

キャリアに悩む学生へ。「自分はこうだから」と枠にはめすぎない

ーーー 最後に、就職やキャリアに悩む学生に一言いただけますか。

好きなことを仕事にされる方は多いですし、それはそれでいいと思います。ただ、「自分はこうだから」と枠にはめ込みすぎるのは、あまり良くないのかなと思っていて。

私も最初は、話すことが割とできたので、営業職を希望したんです。ところが実際にやってみたら、全然好きになれませんでしたし、一人で抱え込んでしまいました。結局、営業をしなくてもいいように、手に職をつける方向へ動きました。

ーーー 枠にはめない、というのはどういうことでしょうか。

許容範囲を広く持っておく、ということですね。あとは、友人に褒められたことや、喜んでもらえたことを、心のどこかにストックしておく。それが「自分の強みはこれなんだな」と気づく手がかりになると思います。

仕事は「お金が稼げるからこれをやる」でもいいと思いますし、休みの日に人の役に立つために自分の能力を使う、という形でもいい。そういうものを見つけられるように、アンテナを張っておくのがいいんじゃないかなと思います。

ーーー 本日は貴重なお話をありがとうございました!

松山 淳司さんの経歴
大学卒業後、営業職としてキャリアをスタート。その後、Web制作会社へ転身し、Web制作の実務経験を積む。さらにグラフィックデザインと写真スタジオをメインとするデザイン会社へWeb担当者として参画し、クリエイティブ全般の専門性を獲得する。

2012年、個人事業主「クライプキン」として独立。企画から撮影、デザイン、Web実装までを一貫して手がける体制を築いた後、信頼性の向上と基盤強化のため、2018年に株式会社クライプキンを設立。現在は代表取締役として、これまでの多角的なクリエイティブ経験を活かし、企業の成果にコミットするWebマーケティング事業を展開。

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