生成AIを「試してみる」段階を過ぎて、いよいよ現場で使いこなせるかどうかが問われる時代になりました。とはいえ、ツールを触ってはみたものの、そこから先に進めずにいる企業も少なくありません。
そんななか、「教育→伴走→実行支援」までをワンストップで引き受けているのが、株式会社Saixです。代表の杉田海地さんは、法人向けのSNS運用代行からYouTube、そしてリクルートを経て、株式会社Saixを立ち上げました。
派手な言葉よりも、現場での手触りを大事にされている印象の杉田さん。100社以上の企業様を支援している株式会社Saixの事業について、起業のきっかけ、そして「世の中から残業をなくす」という言葉に込めた思いまで、じっくりお話をうかがいました。
会社概要

| 企業情報 | |
|---|---|
| 代表取締役 | 杉田 海地 |
| 事業概要 | 【コンサルティング・研修事業】 ①生成AIを活用した業務コンサルティング(主力事業) ②AIシステム受託開発 ③生成AI研修 【SaaS】 ④生成AIマニュアル作成ツール(注力事業) |
| HP | https://saix.co.jp/ |
| YouTube | かいちのAI大学 / Saix(サイクス)https://www.youtube.com/@kaichi_ai (登録者48,000名以上 2026年7月現在) |
AIの活用を「教育→伴走→実行支援」まで、一社で
——まず、事業内容を教えてください。
大きく四つあります。①生成AIを活用した業務コンサルティング、②AIシステム受託開発、③生成AI研修、④AIのマニュアル作成ツール(SaaS)です。この四つを主にやっています。
ひとことで言うと、AIの活用を軸に、企業の経営課題を解決する会社です。「教育→伴走→実行支援」を一気通貫で支援できる体制がある、というのが特徴だと思っています。
——そのなかで、主力になっているのはどの事業でしょうか。
主力はコンサルティングですね。支援先は、5〜10名くらいの規模に絞ることが多いです。100人規模の会社でも、部署やマネジメント層に対象を絞って、10名くらいの単位で深く入っていきます。そのほうが、一人ひとりに徹底的に伴走できるからです。
最近は、そこに向けてClaude CodeやCodexといったツールを導入し、業務を効率化・自動化していく——そうしたご支援の需要が、いま一番伸びています。
——注力しているのはどの事業ですか。
いま力を入れているのは、マニュアル作成のSaaSです。ここは自社メディアも構築していて、SEOで順位が上がって、そこ経由でお問い合わせが来たら、どんどん導入していく、という流れをつくろうとしています。認知の拡大から案件の獲得まで、メディアを起点に回している感じですね。
——システム開発は、どういった案件が多いのでしょうか。
多いのはSalesforceのリプレイス案件です。既存のアプリにお金を払っていて、そこにコストがかかっている部分を見つけて、「じゃあこちらで自社のアプリやシステムを開発しますよ」という形で置き換えていきます。学習コストをかけない意味でも、SalesforceのUIと遜色ない形で設計するようにしています。
要件定義から入ることが多いんですが、実は一番のパターンは、コンサルティングでずっと入っていることなんです。ずっと伴走していると、その会社の課題感が見えてきます。そうすると、コンサルティングでは巻き取りきれない範囲を、システム開発でやりますよ、という自然な流れになります。コンサルティングから入って、無理なく次につながっていく感じですね。
「教える」か「作る」か——多くの会社は、どちらかしかできない
——AI系の会社が急増するなかで、他社との違いはどこにありますか。
実際の強みは、まずClaude CodeやCodexまわりの知見が、他社よりも深くあること。それから、セキュリティの部分ですね。AIツールの使い方を教えるだけじゃなくて、セキュリティ対策も企業に沿ってちゃんとやりますよ、と。セキュリティに強いエンジニアもチームにいるので、そこは強いと思います。
——「Claude Codeに知見がある」というのは、専門的すぎて顧客には伝わりづらい気もします。どう言い換えられますか。
そうですね。ひとことで言うと、「企業のなかで使われずに眠っているデータをAIに連携させ、業務を効率化・自動化していく」ということです。データの利活用とAIの連携については、ある程度、知見やノウハウが溜まってきています。
まったく知らないツールをゼロから覚えましょう、という側面だけではなくて、いま会社にある既存のオペレーションやデータを活かせます。そこが伝わるといいなと思います。
——具体的な実績としては、どのようなものがありますか。
わかりやすいところだと、東証プライム上場の北の達人コーポレーションさんに導入いただいています。法律・表記まわりのリサーチ業務を「数時間かかっていたものが、ほぼゼロ」まで削減できました。Workspace Flowsを使って、65%を自走化しています。
ほかにも、リディッシュ株式会社さんでは、研修導入後に月間1,278時間の業務削減(52%減)ができました。週3日以上AIを使う人の割合が、66.7%から100%まで上がっています。税理士コミュニティのTHE CXO株式会社さんでは、受講後に「今後もAIを活用したい」と答えた方が97%(38人中37人)でした。
——公式YouTube「かいちのAI大学」も、5万人近い登録者がいらっしゃいますね。
はい、登録者は48,000名を超えました。累計だと277万回くらい見ていただいています。これは数字そのものというより、「代表自身がちゃんとAIをわかっている」「コンテンツマーケが得意である」ことの裏付けとして受け取ってもらえたら、という感じですね。1人語りで、ここまで来たので。
株式会社Saixの実績一覧:https://saix.co.jp/works/
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@kaichi_ai
コンサルティングで終わらせず、実行まで踏み込む
——顧客にはなかなか伝わりづらい、マニアックな強みはありますか。
コンサルティングって、「アドバイスしましょう」「戦略を壁打ちしましょう」で終わることが多いんです。
でも、うちは一部、スキルの開発やClaude.mdの整備といったところまでやります。ドキュメンテーションの作業や、実際の実行までしたりします。だから、「コンサルティングだけじゃなくて、実行までやりますよ」というのは、ちゃんとお伝えするようにしています。
——商品設計として、こだわっている考え方はありますか。
「無料でネットに落ちている情報は、出し切る」ことですね。研修でもYouTubeでも、そこは全部出します。そのうえで、有料でしか提供できない価値、一次情報だったり、その会社ならではの文脈だったり、実際に動く実行環境だったり、そこに絞って提供します。
社内には「判断の型」を溜めていくナレッジも持っています。過去にうまくいった判断のパターンを蓄積しているので、担当者が誰であっても、再現性高く同じ品質でお出しできます。属人化しない仕組みですね。

(実際に社内で使用されているマニュアルブック)
ご相談から契約までの流れと、独自の「費用対効果の出し方」
——実際にご相談があったとき、どういった流れで進むのでしょうか。
まず一度、面談をさせていただきます。「無料活用セッション」とホームページにも載せているんですが、この1時間で、その会社がどんな業務をしているのか、大きくどこに時間がかかっているのか、そして何に精神的なストレスがかかっているのかを、一緒に洗い出していきます。生成AIの活用余地を、一緒に見つける1時間ですね。
そのあと、面談の内容をもとにこちらでレポートを発行します。「あなたの会社だったら、こういう業務ができますよ」というレポートを、そのまま無料でお渡しします。そこからもう一度面談して、対象の部署・人数・希望期間と、契約条件を決めてスタート、という流れです。
——費用はどのように決まるのですか。
都度お見積もりです。ここは費用対効果の算出方法がかなり独自だと思っています。
前提として、AIを導入しても効果が見えづらい、という状態があります。そのため、たとえば大手企業さまだったら、「月間の業務削減時間 × 1人当たりの稼働単価」で換算します。
「うちのAI導入支援を入れたら、月間で例えば1,000時間分のコストが削減できます」といった形で言えるので、それを金額に直して、「大体、月◯◯万円くらいですね」とお出しします。
5人以下のような小さな会社さんの場合は、セールスかマーケか、といった形で特化します。すでにやっている業務——SEOなのか広告運用なのか営業支援なのか——のなかから対象を絞って、AIを導入したことでどれくらい効果が上がるかを試算します。
加えて、楽観・悲観・中間の三本の効果シミュレーションを作成してご提案することが多いです。ふわっと「AIで全部やります」ではなく、効果が見える形にしてからお渡しするようにしています。
法人向けSNS運用から、YouTube、そしてリクルートを経て
——そもそも、この業界に飛び込んだきっかけは何だったのでしょうか。
元々は、法人向けのSNS運用をやっていたんです。そのころにChatGPTを、まだGPT-3か3.5くらいの時期に使っていて、「これは便利だな」と思ったのと同時に、「広告って、AIで全部なくなるんじゃないかな」と思ったんですね。
未来を考えたときに、やっぱりAIをやると面白そうだなと。それでYouTubeから始めてみた、という感じです。
——新卒では、リクルートに入社されていますね。
はい。ただ、そこで「生成AIを使えば、もっとこういうことができるのに」と思う場面が本当に多くて。なかなかできなかったり、社員があまり使いこなせていなかったりするのを見て、「これをいろんな会社に広めていこう」と思ったんです。需要がありそうだな、と。
——YouTubeには、思い入れがあるのではないかと存じます。どんな思いで始めたのですか。
自分が実践したことを、体系的にまとめたのが最初ですね。当時はどこにも教科書がなくて、指針もありませんでした。だから、自分が使ってみて「便利だな」と思ったことを、世の中の人に広めたいと思って始めました。
動画って、評価がもろに数字で見えるんですよ。だから、その反応を見て改善したり、「視聴者はどういう情報が欲しいんだっけ」と分析したり。数値データがあるので、それをもとに次の企画に反映していきます。伸びるのがどんどん楽しくなって、また新しい情報を拾ってきて、試して、届けて……という繰り返しでした。
いまでも事業はメディアを起点に構築していますし、そのころのやり方が、そのまま活きている感覚があります。
一番ハードだった経験——パートナーの離脱と、2,000件のテレアポ
——これまでで一番ハードだった経験を教えてください。
創業してすぐの時期に、業務をお願いしていた業務委託の方が、離れてしまったことですね。
いま振り返ると、こちらの要求レベルがすごく抽象的だったんです。業務をきれいに切り出して「動画編集を1本まるまるお願いします」というならまだしも、「コンサルティング企業に、コンサルティングをそのままやってください」に近い渡し方をしてしまっていました。それで「難しすぎる」となってしまったんです。
原因を、その方の資質のせいにはしたくなかったんです。目標も、どこまで踏み込んでいいかの範囲も曖昧なまま現場に入ってもらっていた、こちらの組織側の問題だと捉え直しました。少人数だからこそ、一人が離れることが、体制そのものを見直す重い経験になりました。

——立ち上げ期は、案件を取ること自体も大変だったのではないでしょうか。
そこも本当にハードでした。リクルートを辞めたあと、2,000件くらいテレアポをかけたんですが、1件も受注が決まらなかったんです。全部、代表稼働で。実際に企業のオフィスまで、電車で1時間かけて行って、オフラインで面談もしました。それでも「社長がやる気にならない」「来てもらったけど予算が確保できない」「4カ月ほど待ってください」と言われて、そのまま音沙汰がない……ということが、けっこうありました。
「AIを本当に”使えている”企業は、0.1%くらい」
——AIを活用できている企業は、全体のどれくらいだと感じていますか。
うちの基準からいくと、本当に0.1%くらいだと思っています。正直、AI研修をやっている大企業でも、使いこなせているとは思えません。
というのも、多くの方が「ツールを触った」ところで止まってしまっているんですね。ChatGPTで調べてみた、Claude Codeを少し触ってみた、くらいで終わってしまっています。厳密に言うと、ご本人たちが「まだ使えていない」ということに気づいていない、という状態でもあります。
——では、Saixが提供できるのは、どういう部分なのでしょうか。
ツールの使い方を教えるだけじゃなくて、そもそもその会社にどんなデータがあるのか——お客さんのデータ、商談の記録、インタビューの議事録、いろんな定量・定性データを見て、それを生かす仕組みをつくれることです。
ステップは大きく二段階あって、一つ目が、オフラインのデータをオンラインに落とし込むこと。二つ目が、そのオンラインのデータをAIで活用していくこと。実は一つ目の「オフラインをオンラインに」ができていない会社が、とても多いんです。
たとえば、ポスティングをやっている会社があったとして、そのデータって、果たしてちゃんと取れているのか。QRコードを一つ挟むだけで、それがオンラインのデータになります。そういう、地に足のついたところから始められます。
——「業務が特定の人に集中している」という会社も多そうです。そこにはどうアプローチしますか。
それはもう、うちの社内マニュアルの出番ですね。属人化に悩んでいる会社は、本当にめちゃくちゃ多いんです。データや判断がその人に全部委ねられていたり、新卒からすると「聞きづらい」ということが起きたりします。忙しそうな相手に、わざわざ時間をとって業務内容を聞くのは、なぜか気が引けるんです。
——「偉い人に聞きづらい」というのは深いインサイトですね。どの企業でも起こっている現象だと思います。
そうですよね。そこは、その方に1時間くらい思考や判断を話してもらって、それを新卒でも読める状態にしていきます。とはいえ、それって、作るのが面倒で難しいんです。
だから、AIが自動でマニュアルを作ってくれる仕組みを使ってもらえると、新卒教育を毎回ゼロからやり直さなくて済みますし、社内のちょっとした質問がエースに集中しなくなります。
新卒でも、上司と同じクオリティで成果物が出せるようになって、教育コストが限りなくゼロに近づきます。そういうことができます。
創業1期目から、上場企業と直接取引できる理由
——創業1期目にもかかわらず、プライム上場企業と直接お取引されているのは驚きです。なぜ実現できているのでしょうか。
一番大きいのは、「紹介でつながった」ことです。それも、クライアントさんからのご紹介なんですね。支援したクライアントに満足いただいて、次のお客さんを紹介してもらう。それがたまたま、上場企業の社長さんだった、というケースがありました。こうやって数珠つなぎでやっていくと、すごく良い流れができていきます。
もうひとつは、「顔が見える関係」をすごく意識していることです。担当者の方と実際に飲みに行って、その場でFacebookを交換して、というような。AIの時代だからこそ、逆にオフラインの空間を大事にしています。
オンラインで完結できることが増えたぶん、実際に会って進める関係のほうが、かえって信頼していただけます。そこから仕事の話になることが多いんです。
「世の中から残業をなくす」というミッションに込めた想い
——どのような社風・カルチャーの会社なのでしょうか。
カルチャーは、いちばんこだわったところかもしれません。「世の中から残業をなくす」というビジョンを掲げています。ここで言う残業は「やらされ仕事」と定義しています。それをなくすためにSaixがある、という考え方ですね。
実は、社内には「AIのCHRO(最高人事責任者)」のような存在がいて、ビジョンやポリシー、採用基準を細かくまとめてくれています。それを社内アプリに入れて、いま働いてくれているメンバーまで浸透させる仕組みをつくっています。「声を拾う」「優しくする」といったことも、やらされ仕事をなくすためのポリシーとして言語化して、1on1などで確認したりしています。

(社内のミッション・共通言語についてまとめたマニュアル)
——働き方についてはいかがですか。
基本はフルリモートで、固定の出社日は設けていません。パートナーは全国どこからでも働けます。ただ、本音を言うと、出社してもらえるのはうれしいんですよ。「一緒に作業しましょう」というニュアンスで。強制ではないけれど、顔を合わせて進める時間の価値も、大事にしたいと思っています。
業務を委託している方のことも、「外注先」ではなく「パートナー」と呼んでいます。プロとして、対等に向き合いたいからです。
これから、そして就活生・キャリアに悩む方へ
——会社を伸ばしていくうえで、いま一番のポイントはどこにありますか。
シンプルに、案件を安定して獲得できる状態をつくること——新規獲得のマーケティングですね。いい支援ができる自信はあるので、それを届けられる相手を、もっと増やしていきたいと思っています。
——最後に、就活生・キャリアに悩む方へメッセージをお願いします。
いまはテレワークやオンライン面接が当たり前になって、就活もオンライン中心になっていますよね。オンライン面談、オンライン面接、オンラインの説明会。でも、だからこそ、オフラインの活動をもっとやってほしいと思っています。
担当者と飲みに行くとか、就活を教えてくれる先輩と飲みに行って、一次情報を拾いに行くとか。私はリクルートだけでも、OB訪問を80人とやりました。Facebookでつながって——学生ってあまりFacebookをやらないので——ほかの学生がやらないことを一つ尖らせて、やりきる経験をしてほしいんです。
大学4年生くらいから、1〜2週間で準備できる単発の企画でいいんです。Facebookで就活生同士の交流会をやってみるとか、OB訪問会を開いてみるとか。それがオフラインの行動と結びついていたら、就活の大きな強みになると思います。
——本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!学生〜新卒時代から突出した行動力・経験値をお持ちで、それでいて過信せず地に足をつけて取り組まれている点が印象的でした。
| 株式会社Saix 杉田海地 2025年、株式会社リクルートに入社後、Indeed Japan株式会社にてHR領域(採用市場)におけるデジタルマーケティングの最前線を経験。新卒用のマニュアル作成の経験から、同年10月に株式会社Saixを創業。現在は生成AIのプロフェッショナルとして上場企業や成長企業の生成AIマニュアル作成支援・AI活用コンサルティング支援を行う。 |

